密室の恋人

 



 夢の中、凛子はエレベーターの中に立っていた。

 階数ボタンの前に、こちらに背を向けた細身の男が立っている。

 グレーのスーツ。

 あのとき見たのと、同じ夢だ。

 凛子は彼の背中に向かい、呼びかける。

「あの、蒼汰さんに憑いてる人ですよね?
 誰なんですか?」

 彼は階数ボタンに指先を伸ばしかけたが、そのまま何処も押さなかった。

「凛子ちゃん」

 そう聞き慣れない声が自分の名を呼ぶ。

「もう出られないよ」

「え」

「君は此処から。
 僕からもう逃げられない。

 ずっと君は、僕とこの密室に居るんだ――」