密室の恋人

 なんであのときは、あんなに乱暴だったんだろう。

 そう惑うように思いながら彼を見つめると、彼は、ふっと笑って言った。

「……だって、凛子ちゃんの気持ちが大きく蒼汰に傾いたのが見えたから」

「わ、私の考え、読めるんですか?」

 焦ったように問うたが、彼は笑い、

「読めないよ」
と言う。

「でも、目を見てたら、人がなにを考えてるのかわかるんだよ。

 だから、蒼汰のこともわかるんだ。

 あいつは僕のことを忘れたふりして忘れてない。

 だから、すごいな、とは思うよ。

 忘れてないのに、あの会社に入ってきた蒼汰に」

「や、やっぱり、うちの会社がなにか関係があるんですねっ。

 だから、貴方は、あそこで……っ」

 言いかけた口を手で塞がれる。

「ああ、騒がないで。
 蒼汰が起きちゃうじゃない」

 でも、そうだね、と彼は笑った。

 ちょっと弥にも似た笑みだった。