密室の恋人

「あんなことがあったばかりなのに、僕を待つのを危険だとか思わなかったの?

 それとも蒼汰のためなら、そこまでするってこと?」

「それもありますけど。
 貴方を悪い人だと思いたくないのもあったら」
と本音を語ると、彼は言う。

「僕だって、悪霊になんてなりたくなかったよ。

 全部、君が悪いんだ」

 え?

 彼はさっきの蒼汰のように、暗闇を見つめる。

 だが、その瞳の表情が蒼汰とはまるで違っていて、やはり、別人なんだな、と実感する。

 この人は自分で自分を悪霊だというけれど、こうして素を見せているような瞬間の瞳に憎しみはない。

 見ていると、ただ寂しくなってくる。

 彼は凛子を振り返ると、

「どうしたの?
 そんなに見つめて。

 凛子ちゃん、やっぱり、僕のこと、好きなんじゃない?」

 そう言いながら、その手で頬に触れてくる。

 その指先はやさしくて、最初に会ったときの印象そのままだった。