密室の恋人





 蒼汰は駅前で待っていた。

 一際目立つので、すぐにわかる。

「あの人は見たことのある人だ」

 ロータリーを回りながら、運転席の侑斗が言った。

 結局、蒼汰を待たせるのも悪いので、乗せてきてもらったのだ。

「弁当の棚の前で、いつまでも迷っているのを見たことがある。

 ずいぶん前だが」

 そりゃ、コンビニ弁当見るのが初めてだったんじゃないだろうか、と思ったが。

 まあ、幾らなんでも、そんなことはないか、と思い直す。

「なにか進展あったら教えろよ。
 協力してやったんだから」

 はいはい、と言いながら、車を降りた。

 蒼汰はすぐに気がついたようだった。

 こちらへ向かい、歩いてくる。

 侑斗は少し窺うように蒼汰を見ながら、、頭を下げると、彼の到着を待たずに行ってしまった。

「斬新だな。
 別の男の車で来るとは」
と蒼汰はそれを見送りながら言う。

「……侑斗は、弟みたいなものですから。

 っていうか、普通、兄弟かなあ、とか思いますよね。

 なんで、そうじゃないってわかったんですか?」
と言うと、ふん、と蒼汰は信号で止まっている侑斗の青い車を見ながら、

「お前みたいに鈍くないからだ」
とよくわからないことを言っていた。