夜中に目を覚ました凛子は、蒼汰が半身を起こして、部屋の中を見ているのに気がついた。
またあの人? とぎくりとしたのだが、その表情は蒼汰のものだった。
「……蒼汰さん?」
と呼びかけると、蒼汰はこちらを見下ろし、微笑む。
「なんだ。
起きたのか?」
自分も起き上がりながら、凛子は訊いた。
「あの、もしかして、ずっと起きてたんですか?」
「あいつがお前に襲いかかったら、困るからな」
もう少ししたら帰る、と蒼汰は言う。
「蒼汰さん……」
心配になり、そう呼びかけると、
「それか俺を縛りつけとくかだな」
と蒼汰は冗談めかして笑ってきた。
「でも、お前は人がいいから、その霊に哀れっぽいこと言われて、泣きつかれたら、解きそうだな」
と言う蒼汰に、
「あの人、なんなんでしょう」
と呟く。
「あれもまた、蒼汰さんだとか言うのなら、問題ないんですけどね。
二重人格なら、或る意味、蒼汰さんですよね」
「それでも、お前があいつと関係を持つなら、それは浮気だ」
「言い切りますね~」
と凛子は苦笑いした。
「例え、それが二重人格の果てに見えるものであっても、俺という人間は、俺だけだ。
同じ魂でも、別の人格なら、それは俺じゃない」
すっぱりと言い切る、そういうところは嫌いじゃないけど――。



