密室の恋人

「いろいろと疑うようになってしまうから」

「人がいいのと、莫迦なのは違うぞ」

 そう蒼汰は警告する。

 彼の発言はいつも端的だ。

 だが、そりゃそうだな、と思った。

 騙されやすいのと、人がいいのはまた違う。

 真実を見抜けないということなのだから。

 いい人を見限って、悪党に加担してしまう可能性だってある。

「顔つきだけ見てると、蒼汰さんの方が悪党なんですけどね」
と言うと、おい、と蒼汰は睨んでくる。

 そのいつも通りの顔に、笑ってしまった。

 蒼汰の側に行き、ほとんど空になっているカップを受け取りながら言った。

「蒼汰さん、もっと怒鳴ってください」

 蒼汰は、は? という顔をする。

「貴方に罵倒されてると、なんだか安心するんで」

 その方がいつも通りで落ち着くし、これはあの人じゃなくて、蒼汰さんなんだ、と確認できる。

 蒼汰は、
「……莫迦か」
と言いながらも、凛子の頭を抱き、自分の肩へと引き寄せる。

 なんだかいい香りがした。