エレベーターを出て、屋上に続く重い扉を開けると、強く風が吹きつけてきた。
あまり大きくはないマンションだが、結構夜景は綺麗に見えた。
ずっと此処に住んでいるが、夜、屋上に上がってみたことは今までなかった。
新しい発見だ。
蒼汰と居ると、こういうことがよくある。
「遠くまで行かなくても、此処で充分ですね。
あ、飲みかけですけど、飲みますか?」
とまだ手にしていた珈琲を差し出すと、蒼汰はそれを一口飲んだ。
そのまま、手すりにすがり、下を見ている。
そのいつもと違う横顔を見ながら、凛子は思っていた。
あの霊の人が言ってた言葉。
蒼汰さんが、あの人の身体を殺したって。
どういう意味なんだろう。
あのエレベーターでしか最初は見えなかったってことは、あそこでなにかあったのかと思ったけど。
殺人事件でもあったのなら、報道されているはずだし。
そんなことを考えながら、蒼汰に、
「美味しいですか?」
と問うと、
「ぬるいな」
と答える。
だが、蒼汰は、そう言いながらも、もう一口飲んだようだった。
「蒼汰さん。
私に黙ってること、ないですか?」
そう凛子は訊いた。



