密室の恋人

 電話を切ったあと、凛子は侑斗を睨む。

「なんなのよ、もう~っ」

「俺の方が緊張したじゃないか」
と言う侑斗は、袋を持ち替え、じっとりと汗ばんだ手を見せてきた。

「見ろ。
 手に汗かいちまった。

 さ、凛子。

 俺が駅まで乗せてってやるから、すぐ支度しろ」

「えっ。
 いいよ」

「いや、俺はその男を見極めに行く!

 お前は、生まれたときから、俺が見守ってきたんだ。
 おかしな男には渡せんからなっ」

「うーん。
 ちょっとだけありがたい気もするけどさ。

 たまにでいいから思い出してよね。

 私の方が二つ上なこと」

 まるで、本当の姉弟のようなその愛情はありがたいが。

 どうやって、生まれたときから見守るんだよ、と思っていた。