密室の恋人

 



 会社帰り、コンビニに立ち寄った凛子は、あの酒を見ながら考え事をしていた。

 すると、なにかが足にぶつかってくる。

 なんだ? と振り返ると、モップでつつかれていた。

 掃除をしていたらしい侑斗だ。

「凛子、てめー、なに人の店の商品にガン飛ばしてるんだ」
と言ってくる。

 ヤンキーか、と思いながら、
「いや、この酒が始まりだったなと思って」
と言う。

 結局、あれでよかったのか悪かったのか。

 あんなことがなければ、きっと私は、エレベーターの彼を好きなままだった。

 今だって、信じたくはない。

 あの純粋そうな笑顔の人が蒼汰さんに憑いている悪霊だなんて。

「今日はデートじゃねえのか」
と蒼汰が訊いてくる。

「そう毎日デートなんて出来ないわよ。
 昨日は、蒼汰さんじゃなくて、蒼汰さんのお母さまとデートだったしね」

「あの蒼汰の母親か。
 どんな人なんだ?」
と訊く侑斗に、

「たぶん、今、あんたが想像した通りの人よ」
と言うと、ああ、と言う。

 訊いてみたわけではないが、たぶん、実際の薫子とそう違わない女性を想像しているだろうと思われた。

 蒼汰の母が普通のおばさんなわけはない。