密室の恋人

 



 凛子が部署に戻り、デスクに着くと、千尋が後ろに立った。

「凛、大丈夫?」
と訊いてくる。

 椅子を回して振り返り、
「え、なにがですか?」
と問うと、

「上村、手が早いから」
と言ってきた。

「そうですか?
 でも、千尋さんにはなにもしなかったんでしょ?」

 別に、弥側についているわけではないのだが、つい、そういう言い方をしてしまった。

 だが、千尋は、
「そんなことないわ」
と言う。

 なに? と思った。

「最初はあったのよ、いろいろと。
 入社したての頃とか。

 弾みっていうか。

 でも、あいつ、気に入ると逆になにも出来なくなるみたいで、その一、二回で終わって。

 そのまま、距離置いてたの。

 ……って、なんて話を職場でさせるのよ」

 赤くなって言う千尋を可愛いと思いながらも、
「いや、千尋さんが勝手にしたんじゃないですか」
と苦笑する。

 おのれ、上村さんめ、なにもなかったかのような言い方してたくせに〜。

 ほんとに油断ならない人だ。

 語ってる話の何処までか本当かわからない、と思った。