密室の恋人

 



 凛子は帰りの車で訊いてみた。

「あの、蒼汰さんは、何故、あの会社に入ったんですか?」

 ちょっと気になることがあったからだ。

 蒼汰は、
「……なんでだろうな」
と呟く。

「いろいろ理由はあったし、叔父貴が鍛え直してやるから来い、と言ったのもあるが、最終的には自分で決めた気がする」

 まあ、あれだ、とちょうど赤だったので、こちらを振り向き、蒼汰は言った。

「お前と出会うために行ったんだよ」

 自分はそんな臭い台詞を言われたら、笑ってしまう人間だと思っていた。

 だが、今、蒼汰にそう言われたら、なんだ泣きそうになってしまった。

 侑斗が言うように、付き合い始めの魔法なのかもしれないが。

 蒼汰が軽く身を乗り出し、口づけてくる。

「あ、青になりま……」

 すよ、と言いたかったのだが、その前にそれが目に入っていた。

 国道沿いに派手にはためく、オレンジ色の鍋、鍋、鍋の幟。

「あっ、上村さんが言ってたラブホテルッ!」

 まだ、冬じゃないのに、鍋の幟がっ、と思い、叫んでしまったのだが。

「……凛子」

 青になっても出そびれたので、後ろからクラクションを鳴らされながら、蒼汰はこちらを睨んでくる。