密室の恋人

「では、凛子さん、また」

 ごきげんよう、と去って行ってしまう。

 年齢を感じさせない姿勢のよいその後ろ姿を見ながら、
「なにか……名画の世界に迷い込んだ気分でした」
と呟くと、

「すまない」
と蒼汰は謝る。

 いや、なにもすまなくはないのだが、息子というのは、女性に母親を紹介するときには、何故か、すまないという気分になるようだった。

「楽しかったですよ。
 結構いい時間が過ごせました」
と言ったのだが、彼女の息子のはずの蒼汰は、

「本当か?」
と疑わしげに訊いてきた。