密室の恋人

「さあ。
 蒼汰があそこにすると言ったのです。

 武洋(たけひろ)と仲良くないのに、と思ったんですけどね」

 武洋というのは、どうも社長のことのようだった。

「はあ、よく喧嘩されてますね」
と言うと、

「武洋は昔、私のことが好きだったらしくて、たまに思い出したように、主人や蒼汰に突っかかってくるものですから」
と言う。

 今、さらっと言いましたね、お義母さま。

 そのとき、彼女は凛子の後ろを見て言った。

「あら、蒼汰。
 待ってなさいと言ったじゃないの。

 そうして、嫁を大事にするのを見ると、姑は機嫌が悪くなるものなのよ」

 気をつけなさい、と言われ、この母には頭が上がらないらしい蒼汰は、
「……気をつけます」
と作り笑顔で言った。

「あ、じゃあ、私は帰ります。
 蒼汰さん、お義母さまと」

 帰ってください、と言おうとしたのだが、薫子は、
「私は大丈夫です。
 迎えの車が来ますから」
と立ち上がる。