密室の恋人

 優雅なフォルムのグラスを口に運ぶ薫子を見ながら、凛子は、お姑さんだから、いずれ揉めるかもしれないけど、私、この人好きだな、と思っていた。

 多少、時代からずれてる感じはするけど。

 この先、なにかあったとしても、初対面のこのときに、素敵な人だと思ったことは、きっと一生忘れない――。

「伊月様」

 ……まあ、こうやって、たまたま来ていたというオーナーとか、がすっ飛んできて、挨拶してきたりするのは慣れないけれど。

「蒼汰の嫁の凛子です」

 そうあっさり紹介されてしまう。

 あの、気が早いです、と思ったのだが、薫子の顔を潰すわけにはいかないので、丁寧に挨拶を返した。

「綺麗なお嫁さんですね」

 伊月家の嫁だと思っているせいか、オーナーは何割増しかに褒めてくれた。

 ちょっと申し訳ない気分だ。

「もう一杯呑んだら帰りましょうか」

 オーナーが去ったあとて微笑む薫子に、お義母さま、まだいけるんですか、と思ったのだが。

 そこで、肝心なことを訊き忘れていると、気がついた。

「あの、ちょっとお訊きしたいんですが。
 蒼汰さんは、何故、うちの会社を選ばれたんでしょう?」

 下積みを経験するにしても、他に幾つも同系列の会社はあると思うのだが。