密室の恋人





 店に入り、奥の席に着く。

 煉瓦風の壁の前の椅子に腰掛け、蒼汰の母、薫子(かおるこ)が訊いてきた。

「凛子さん、なにになさる?」

 はあ、なんにでもなさってください、と凛子は思った。

 ちらとこちらを見、
「じゃあ、私と一緒でよろしいかしら」
と一番高いコースを頼んでくれた。

 そういう言い方をしないと、凛子が遠慮すると思ってのことのようだった。

 しばらく話していると、薫子が言い出した。

「貴女はうちのような家はお嫌いみたいね」

 何故、わかりましたか、と思ったが、顔に出ていたのかもしれない。

「あの、そういえば――」

 服を借りた話をしなければ、と思っていると、
「なにもかも槇村から聞きました」
と薫子が言う。

 さっきの人が槇村なのだろうか?

 偉く若かったが、と思っていると、
「あれは蒼汰がよく話す槇村の息子です」
と訊くまでもなく、答えてくれる。

 さ、さようでございますか。