六時十五分に、凛子は指定された店に来ていた。
高めの値段設定の店ではあるが、レストランのチェーン店だった。
何故、此処?
と思いながら、入り口に立つ。
よく考えたら、その蒼汰さんのお母様の携帯の番号も知らないし、誰が蒼汰さんのお母様か……
わからない、と思う暇もなかった。
よく磨かれた今時見ないクラシカルなベンツが着いたかと思うと、何処の英国貴族の執事かというような身なりの若い男が降りてきた。
その男が開けたドアから、鍔が短めのハットを小粋に被り、細身のスーツを着た女が現れる。
じょ……女優さんかと思った。
絶対、蒼汰の母親だ。
あのロマンティックなネグリジェが似合いそうだし、なにより、顔がそっくりだ。
「凛子さん?」
と向こうも何故か一発でわかったらしく、微笑みかけてくる。
「入りましょうか」
「あ、はい」
自分が本当に凛子かどうか確かめもしない。
そして、こちらの挨拶の言葉も聞かない。
まさくし女王様。
なるほど、蒼汰の母親だ、と思った。



