密室の恋人






 八時まで暇になってしまった。

 一度帰ろうかな、とマンションの下を通ると、寄って、というように、コンビニが明るく輝いて見えた。

 そこに日常がある。

 このまま、此処に吸い込まれて、スイーツ買って帰って寝たい。

 ぼんやり立ち止まり覗いていると、雑誌を立ち読みしているサラリーマンと目が合ってしまった。

 うわっ、という顔をされる。

 あまりにも動かず、ぼうっとしていたので、暗がりに立つ、髪の長い女の霊だと思われたのかもしれない。

「営業妨害か」

 ゴミが大量に入った袋を手に、侑斗が立っていた。

「晩メシか。
 またコンビニ弁当か。

 それでいいのか女子」
と畳み掛けるように責めてくる。

「あんたんちがこんなもの一階に作ったから悪いんじゃないの」

「八つ当たりか。

 そうだ。
 俺は今日はもうすぐ上がるから、ニャーを連れてってやろうか?」

「ああ……いいわね。

 コンビニ弁当食べて、新作スイーツを食べて、ニャーと寝転がって遊びたい」

「お前のその妄想の中に、ニャーを連れていった俺が欠片も入ってないのが気になるがな。

 なんだ。
 まだ帰らないのか?

 何処か行くのか?」
と訊いてくる。