密室の恋人

「全部しゃべらないと、あることないこと、蒼汰くんに吹き込んじゃうよ〜。

 二人で食べた美味しいカレーっていうのは、実はホテルのルームサービスだったんですとか」

「か、勘弁してくださいよっ。
 上村さん~っ」
と弥の腕をつかみ、泣きを入れる。

「いやあ、最近はさ。
 ラブホテルでも凄いよね。

 入り口に、冬になると、鍋鍋鍋、とか幟が立ったりしてさ。
 間違って、家族連れが入っちゃうよねー」

 確かに。
 なにか美味しそうな店だと思っていたら、ラブホテルなことがある。

「でも、なに言っても無駄ですよ。
 蒼汰さんは、私が誰ともなにもしてないって知ってますから」

 これで、あの弥を言いくるめられるかと、ちょっと勝ち誇ったように言ってみたが、へえー、と弥は、冷ややかにこちらを見たあとで、

「でも、最後までしなくても、途中まではなにかしたかもね」
と言ってくる。

 ああ言えばこう言う。

「ほんっとうに悪霊よりタチが悪いですよね」

「今頃知ったの?」

「千尋さんは上村さんと結婚しなくて――」

 あ、しまった。

「そう。
 僕と結婚しなくて、正解だよね。

 はい。
 もう君は今の失言により、僕から逃げられないよ。
 罪の意識に囚われて」