密室の恋人






 昼休み、結局、凛子は、りんごジュースのパックを手に、屋上の手すりにすがっていた。

「死活問題です」
と訴えると、横で手すりにすがる弥が、

「え、なにが?」
と訊いてくる。

 蒼汰は仕事で外に出ていたらしく、撒くまでもなく、お昼は一緒には食べられなかった。

 むしろ、撒くのに苦労したのは、千尋たちだ。

 まあ、不自然な理由で遅刻してきたのだから仕方がない。

 話が聞きたくて仕方ないようだった。

 こういうとき、会社に近すぎると、道路事情を言い訳にできないから不便だな、と思った。

 蒼汰はちゃっかり一度来て、市内に営業に出ていたふりをしたらしいが。

 お坊ちゃんのくせに要領いいんだから、もう~、と思いながら、弥に言う。

「エレベーター使えないのは、やっぱりきついです。
 仕事中の移動も総務は多いし。

 でも、まあ……確かに乗るの、ちょっと怖いんですよね」

「この間まで、エレベーターの霊の方が好きだったくせに。
 女の人って、本当にバッサリ切り捨てるよね~」

 うう。
 なんか千尋さんに対する嫌味まで、私にぶつけられているような。

 千尋さんだって、忘れるのに、二年かかったって言ってたじゃないですか、思ったが。

 未だ千尋を忘れていない弥にそう反論してみても、やり返されるだけだろう。