密室の恋人

 
 



「私があの密室で、ずっと恋していたのは――」

 凛子は蒼汰を前に、困ったことに涙を落としていた。

 なんとか堪えて、気持ちを伝えようと思うのに。

 あの悪霊の言うことは正しい。

 私はただ、この人にあんな風に笑いかけて欲しかっただけだったんだ。

 私があの密室で、ずっと恋していたのは、この人だった。

 まだ、最後まで言ってはいないのに、蒼汰はやさしく凛子の髪を撫で、言ってきた。

「……俺は最初から知ってたぞ」
と。

 そして、蒼汰は、あの悪霊の人よりも優しく笑い、口づけてくる。

 よし! と言った蒼汰は、
「ちょっと来い」
と言い、立ち上がった。

「えっ?」
と言った瞬間、蒼汰に抱き上げられていた。

「奴が俺の身の内に潜んでいるのなら、いつ、なにが起こるかわからない。
 とりあえず、悪霊にされる前にしとこう!」
と蒼汰は宣言をする。

「えっ。
 なにをっ?

 ていうか、あのっ、そろそろ支度しないと、遅刻しますよっ」
と暴れてみたが、蒼汰の腕は、びくともしなかった。