密室の恋人

「入社した頃は、卒業旅行とかのあとで、食べ過ぎて、ちょっと太ってたんですよ。

 気にしてるところに、あの一撃っ。

 絶対!
 一生っ。
 忘れませんっ」
と言う凛子にいつもの勢いが戻った気がして笑う。

「いいぞ。
 一生、ずっとそうやって文句言ってろ、俺の側で」

 凛子は怒鳴るのをやめた。

「蒼汰さんも、私と出会ったときのことを覚えてるんですか?」

「ああ」

「ずっと私を威嚇してたのは、あのときの顔を見られたからですか?」

 凛子が乗ってくる前、ちょっと物思いに耽っていた。

 確かに、いつも社内では見せないような顔を見せていたと思う。

「莫迦。
 気になってたからに決まってるだろう」
と少し赤くなり言うと、

「小学生の児童のようですね」
と言う。

「お前……その辺にしとけよ」
といつものように威嚇して言うと、ははは、とようやく凛子は笑ってみせた。

 笑いながら、涙を落とす。

「私……なんで気づかなかったんでしょう。

 あの霊の人に言われました。

 私はただ、貴方に、あの人みたいな笑顔で、笑いかけて欲しかっただけなんだって。

 私があの密室で、ずっと恋していたのは――」