密室の恋人

「キスされて、怖くなって、突き飛ばして、トイレに逃げて籠城したんです」

 そう聞かされ、少しほっとする。

 いやいや、それでも、よくはないが。

「そういうときは――」

 俺を呼べと言いたかったが、凛子に襲いかかったのも自分だ。 

「そういうときは、俺を殴ってでも逃げろ」
と言うと、凛子は、

「はい。
 今度からは、遠慮なくぶちかましますっ」
と言う。

 作った拳に危険を感じ、
「いや、ちょっとは加減してくれ……」
と言ったが、凛子は、

「だって、私、ずっと根に持ってるんです」
と言い出した。

「私、四百キロとかありませんから」

 は?

「最初に会ったとき、言ったじゃないですか。
 私が乗ると重量オーバーでブザーが鳴るって。

 蒼汰さんと私しか居ないのにっ。
 私、そんなに太ってないですもんっ」

「莫迦か、お前は。
 冗談に決まってるだろう。

 というか、そもそも、太ってる人間に向かって、そんな危険な冗談、言わないだろうがっ。

 お前はむしろ、もうちょっと太った方がいい、特に胸とか」

 どすっ、と足を踏まれた。