密室の恋人

 蒼汰はおもむろに、にゃーを奪い取り、自分が抱き締めた。

「和むなあ」
と呟く。

 これで少し怒りが和らいでくれたら、と思って気づいた。

 そのために、侑斗は、にゃーを貸してくれたのだろう。

「あのう、蒼汰さん。
 私、今日は、蒼汰さんに会わずに、こう、自分の心を見つめ直したかったんですよね」

「俺に会わずに?」

「蒼汰さんと話してると、どうも、ペースに引きずられて、流されてくからですよ」

「お前、それは俺が好きなんだろう」

「いっそ、私は貴方になりたいですよ」

 分けてください、その自信、と思った。

「少なくとも嫌ってはいない」
と言い切る蒼汰に、まあ、それはそうかも、と思う。

 全力で嫌っている人間なら、なにをどう言われても嫌だ。

「お前が俺を遠ざけようとするのなら、俺は、にゃーと此処に居座るからな」

 ええーっ。

「籠城してやる」

 敵陣で籠城する意味がわからないのだが。

「俺は今日は此処に泊まるぞ」
と言い出す蒼汰に、いや、もう勘弁してください~っ、とにゃーを奪い返す。

 抱き締め、心を落ち着けた。