密室の恋人

 なに? と言われ、

「あー、いえ、なんでもありません」
と言い、珈琲を飲んだ。

 弥は上目遣いにこちらを見、
「ほんと嘘つけないよね、凛子ちゃん。
 しゃべるまで、今日は返さないよ」
と言い出す。

 ……勘弁してください。

 まあ、みんな知ってるらしいから、いいのだろうか、と思い、口を割った。

「あのー、千尋さんが結婚してからも、上村さんのこと好きだったのは、ご存知ですか」

 弥は笑顔のまま、
「いいや、知らなかったよ」
と言う。

 ぐはあっ。
 しまった!

 やっぱりかっ。
 あるもんね。

 周りはみんな知ってて、本人だけ知らないのって。

「心配いらないよ、凛子ちゃん。
 園田がどう思ってたとしても、もう人の奥さんだしね。

 興味ないよ」

「上村さん、棒読みですよ」

 でもまあねえ、と弥はゆったりした柔らかい椅子に背を預けて言う。

「どのみち、二度告白する元気がなかったというか。

 まあ、それだけだったのかも。

 今も園田が好きなのか。

 今更、他の人を好きになるのもめんどくさいから、そう思ってるのか、自分でももうよくわからないんだけどね」

 ただの意地と惰性なのかもしれないと弥は言う。