密室の恋人





 落ち着いた色合いのゆったりとした布張りの椅子。

 アンティークな時計が壁に幾つもかけてある素敵な店だった。

 カレーとチョコレートケーキと珈琲と、弥に言われるがまま、オーダーする。

「僕は絶対、この組み合わせだと思うんだよね」

 いつもクールな弥が大真面目に語るのがおかしかった。

 間でちょっと携帯を確認する。

『今日は自分を見つめ直します。

     凛子』 

 などと書いて送った手前、携帯は鳴らないようにしていた。

 意外にも一度しか蒼汰はかけて来ていないようだった。

 それもまた蒼汰らしいか、と思う。

「なに?
 伊月くん?」
と弥が訊いてきた。

「一度、かかってますね」

「そう。
 かかったのは一度でも、出ないで放置してたら、烈火のごとく怒ってたりしてね」

「なに楽しそうなんですか……」

「人の話なら、恋愛ごとも面白いよ。
 巻き込まれるのは嫌だけど。

 自分のことは考えたくないな。

 ずっと思考は停止したままだよ」

 凛子はそこで渋い顔をしてしまう。