密室の恋人

「うん。
 なにがあったか、訊かないでおいてあげるよ」
と優しい弥は言ってくれた。

「蒼汰さんとは……
 そうですね。

 ぼんやり過ごしてることが多いかな」

 とりあえず、呑もうはなしにしようとか。

 そんなことを蒼汰には言わなくてもいい。

 いいと言うか、そもそもがセオリー無視のマイペースだから。

 あの無人島で二人で寝転がって本を読んだりしたのは、久しぶりに落ち着く時間だった。

「……あの、上村さんには見えてないんですよね、蒼汰さんの横の人。

 なんでわかったんですか。

 私が蒼汰さん以外の人が好きだって」

「ってことは、君が好きなのは、伊月くんの横に居るモノってことだよね」

「好きって言うか。

 蒼汰さんの横に居るのは、蒼汰さんと同じ顔の人なんですよ。

 でも、いつも蒼汰さんとは全然違う優しげな笑顔で、会うと気持ちが落ち着くって言うか。

 幸せな気持ちになるんです」

 ふうん、と相槌を打ったあとで弥は、

「そうか。
 いや、僕は単に、伊月くんほどの人に言い寄られても靡かないのなら、誰か他に好きな人が居るんだろうなと思っただけなんだけど」
と言う。