密室の恋人

「さっき、そこでちょっとだけ友達と食べたんですけど」

 まあ、軽くだったので、まだ食べれないこともないが、そう言った。

 今、彼と目を合わせたら、つい、千尋の話を思い出してしまいそうだからだ。

 そして、間抜けな自分は必ず、それを顔に出す。

 だが、弥はいつものように笑顔で言ってきた。

「君に拒否権はないよ」

 怖いよ、と思いながら、訊く。

「なんでですか」

「だって、僕は君に僕の秘密を話したのに。
 君は君の秘密を話してないよ」

 いや、あの、私が頼んでないのに、勝手に話し出しましたよね、と思ったのだが、迫力負けして、その言葉は口から先には出なかった。

「じゃあ、伊月くんが絶対来そうにない場所で」
と仕切られてしまう。

 まあ、あの人、現れなかったし、いいか、と思い、エレベーターの隅を見る。

 弥もまた、その視線の先を見ていた。