密室の恋人

「あ、あの、うちの家族は本土には居ません……」

 裏返った声でそう言ってしまう。

 何処の離島に居るんだという感じだが、いや、福岡だ。

 簡単に行けてしまう。

「大丈夫だ。
 何処までも行くぞ」

 ……本当に何処までも来そうだ。

「えーと、雨宮くん。
 まあ、頑張って」
とにやにや笑った社長に肩を叩かれる。

 なんだろう。

 乗せられている気がする。

 私も蒼汰さんも。

 社長は蒼汰をなんとかしろと蒼汰さんの親から頼まれていたようだ。

 目論見通り、事が運んでいるので、社長的にはラッキーなのだろう。

 いやでも、こんな庶民でいいんですか? ねえ。

 あの船や島や別荘や。

 見てないけど、自家用ヘリや。

 もう勘弁です。
 私は平凡に暮らしたい。

 ああ、せめて、蒼汰さんが、普通の人だったら。

『いやいや、人を生まれや育ちで差別してはいけないよ』
と言った弥の笑顔が頭に浮かんだ。

 いや、無理です。
 ほんっと無理です。

「……せめて、蒼汰さんが、うちに婿に来てくれたら」

 ちょっと脳をやられていたのか、そう口走る。