密室の恋人

 堂々巡りしそうな会話を打ち切るためではないが、目の前の自動販売機を見、そう訊いてみる。

「此処に好きなカフェオレがあるんですよ。
 それで、あの日、此処に買いに来たんです」
と言うと、腕を組み、自動販売機を見ていた蒼汰は大真面目な顔で、

「運命のカフェオレだな」
と言う。

 はあ、まあ、ある意味。

 確かに、あれがとんでもない運命の幕開けだった。

 ちょっぴり、あのカフェオレを恨んでしまう。

 美味しいけど……。

「あ、蒼汰さん、奢りますよ。
 いつもお世話になっているので」

 せいぜい、百円ちょっとだ。

 だが、ようやく奢ってくれてばかりの蒼汰に少しでもお返しできそうだ、と思って笑うと、蒼汰が、
「じゃあ、なんだかお前が嬉しそうに言うから、奢られよう」
と微笑む。

 その顔を見て、千尋の言葉を思い出していた。

『いいじゃない、彼。
 まっすぐで。

 優しいし』

 そうなんだよなあ。
 普段、あんまり見せることないけど。

 こういう表情はすごく好きだ。

 優しげな感じが、ちょっとあの人と重なって見えるし。