密室の恋人

 



 例の場所、と言うのは、あの結婚の約束をさせられた場所だった。

 まあ、ある意味、思い出の場所か。

 確かに人はあまり来ない。

 そこまで、何故か二人で階段を歩いて上がる。

 いや、何故かじゃないか、と思った。

 蒼汰はもう一緒にエレベーターに乗る気はないようだった。

 でも、必ず見えるってわけでもないんだけどな、と思う。

 今朝、一緒になったときは見えなかった。

 そこに、どんな法則性があるのか気になってはいるのだが。

 あのとき、社長と蒼汰が居た辺りのソファに二人で腰かける。

「例の場所って言うから、エレベーターかと思いました」
と言うと、

「莫迦か。
 それこそ、みんなが聞いてるだろうが」
と言う。

「そういえば、今朝は俺の横をガン見してなかったな」

「今朝は見えなかったんですよ。
 なんででしょう?」
と蒼汰の顔の横辺りに向かい、手を振ってみたが、

「やめろ」
と払われた。

「まあ、もう、出てこないのなら、それでいい」