もうお茶出しは終わっていたので、給湯室の後片付けを千尋としたあと、凛子は小さな冷蔵庫の上にすがって、ゼリーを飲んでいた。
「いいじゃん。
伊月蒼汰と結婚。
私がしたいわ」
盛り上がる千尋の言葉を、いや、上村さんに殴られますよ、と思いながら聞いていた。
「もう千尋さんは自分がいつもラブラブだから、そんな呑気なことを」
と言うと、千尋は、
「ラブラブになったのよ」
と言う。
「え?」
「いやー、旦那のこと、好きではあったんだけど。
やっぱり、ちょっと胸に引っかかりがあったせいで、二、三年はまだね」
「引っかかりって」
と言うと、千尋は、周りにもう誰も居ないのをちらと確認し、小声で、
「他に気になる人が居たから」
と言った。
凄まじく嫌な予感がするのだが。
「上村さんじゃないですよね?」
訊きながら、何故か声が裏返ってしまっていた。
これだけは訊くまい、と思ったのだが、人間とは不思議なもので、そう思った瞬間、口から出ていた。
「あら、なんで知ってんの?
誰かから聞いた?」
といつも一緒に昼食を取っている千尋の友達の名前を挙げてくる。
うわ〜、勘弁してください、と思っていた。



