密室の恋人

「だって」

 昨夜の電話のせいですよね、と言いかけたが、言ったら、蒼汰に悪い気がするのと、みんなが聞いているので黙った。

 だが、蒼汰は遠慮なく言ってくる。

「あのあと、俺はよく眠れたぞ」
と。

「……今、殴ってやろうかと思いましたよ」

 結局、五時くらいまで眠れなくて、冷えて、何度もトイレに行ったりしたのに。

「伊月、雨宮さんと付き合ってるの?」
と後ろから先輩らしき人が訊いてきた。

「はい」

 はいじゃないだろ~っ!?

 社内恋愛って、みんなが知ってても、秘めておくものじゃないのか?

 たぶん、蒼汰の中に別れる、という想定がないからだろうが。

 っていうか、付き合ってないし。

 耳を澄ましていたらしい女の子たちが、ええーっ、と落胆の声を上げる。

 やめて。
 こんなところで。

 睨まれるから~っ、と思っていると、同じフロアの年配の男性社員が、同じ部署の人たちに、
「ほら、お前らが、ぼんやりしてるから、雨宮さん、他所の部署の奴に持ってかれちゃったじゃないか」
と言っていた。