密室の恋人






 朝、ゼリー状のエネルギー補給飲料を手に、エレベーターに駆け込むと、蒼汰が先に乗っていて、開けるのボタンを押してくれていた。

 ちょうど定員になったようで、蒼汰はボタンから手を離しながら、
「寝過ごしたな」
と言う。

 うう。
 誰のせいなんですか、と思いながら、何故気づかれたんだ。
 髪かな、と手で直していると、

「いや、そっち」
と蒼汰はゼリーのパックを指差す。

「ご飯食べる時間なくて、今、侑斗の店に駆け込んで買ったろ」

「やっぱり、超能力者ですか」
と言うと、

「莫迦。
 っていうか、超能力者ってなんだ。

 子供か」
と言われた。

 この会社の男の人は、超能力者だの、仙人だのが居て、なんでもお見通しで困るな、と思っていると、蒼汰は、
「見えたんだ。
 ちょうど、正面玄関から下の道を見たら」
と言う。

 どうやら、お見通しなのは、単に目がいいからのようだった。