密室の恋人

 時計を見、今から、配りに行くのもなー、冷凍しよっ、と鍵をかけ、部屋に戻った。

 テレビもつけていないので、しんとしている。

 前が交通量の多い道路なので、車の走る音は聞こえてくるが。

 猫が一匹居なくなっただけで、こんなに静かなのか、と思った。

 なんだか部屋の明かりまで暗く感じる。

 こんなとき、ふと、霊現象でも起きて、あの人が現れてくれないだろうか。

 そんなことを考えてしまう。

 駄目よね、駄目。

 条件が揃わないと現れないんだから。

 伊月蒼汰とエレベーター。

 その二つが揃わないと彼は現れない。

 寂しいので、録っておいたお笑い番組を見ていると、お腹が空いてきた。

 評判通り美味しい侑斗がくれたパンを齧りながら、

 ……もう今日はこれに、カップ麺でいっか、と思う。

 明日はちゃんと食べなきゃ、肌荒れしちゃうもんなあ。

 明日、明日か……。

 明日、デートだ、と言った蒼汰を思い出す。

 まあ、明日には忘れてるかも。

 ただの勢いだったみたいだし。

 小さく欠伸をした凛子はそのまま大きなビーズクッションにすがって寝てしまった。