密室の恋人

「朝もエレベーターに霊が出るって話をしていたから、ちょっと訊いてみたんだが。

 確かに、そういう話もあるようだな。

 そこまではっきり見える人間は居ないようが」

 だが、大抵の人間はなにも気づかず、乗っている、と言う。

「そうですね。
 それに、私に見えてるものと、上村さんに見えてるものも、また、違うんですよね」

 凛子はそう溜息をついて言った。

「それにしても、上村さんと居ると、なにもかも見透かされてるみたいで怖いんですけど」

 今日のハイネックとか、と思う。

 蒼汰がつけた痕のせいで、この季節にハイネックだ。

 まあ、ノースリーブだが。

 普通なら気づかないはずだが、弥なら、なにか察しそうな気がして、身構えてしまう。

「幾ら上村さんでも、なにもかもわかるわけじゃないだろう。

 お前の頭の中で、上村さんが仙人みたいになってるだけだ」

「そうなんでしょうけどね」

 確かに、実際の上村は、仙人でもなんでもない。

 たった一人の好きな人に、告白も出来ないただの男なのだが。

 そのあとは、弥と霊の話はしなかった。