密室の恋人

 すみません、すみません、と頭を下げて、蒼汰の手を引き、奥の棚へと向かう。

 酒の棚の前で小声で叫んだ。

「もう~っ。
 此処に買い物に来られなくなるじゃないですかっ。

 だいたい、なんで、上村さんに喧嘩を売るんですかっ。

 お世話になってるんじゃないんですか?」

「世話になってるし、俺はあの人を尊敬している。

 だから、あの人には喧嘩を売ってない。
 お前に売ってるんだ」
と言われてしまう。

 私より、男の友情の方が大事か。

 なにやら矛盾しているような、と思いながらも、蒼汰のそういうところは嫌いではなかった。

 仕事でも、恋愛でも、男同士で足を引っ張り合うのは、見ていて、あまり気持ちのいいものではない。

 それは男性側からしても同じことなのだろうが。