密室の恋人





「こうらっ、凛子っ」

 蒼汰と待ち合わせをした時間になったので、下りてきて、コンビニに入ろうとした瞬間、凛子は後頭部に衝撃を受けた。

 振り返ると、蒼汰が立っている。

「……あの。
 もしや、今、なにか投げました?」

 見ると、足許に、LEDの細くて小さい懐中電灯が落ちている。

「なに投げてんですか」

 これ、相当痛いですよ、と拾って渡すと、蒼汰はそれをポケットにしまいながら、
「制裁だ」
と言う。

「なんの制裁ですかっ」

「エレベーターで、上村さんといちゃついてただろう」

 俺が昼休み返上で働いてたのに、浮気かっ、と言う蒼汰に、

「なに言ってんですかっ。
 一緒にエレベーターに乗っただけじゃないですかっ」
と言い返す。

 もうコンビニに入っているのに、まだ揉めていたら、後ろを通った侑斗が、
「もう別れるのか」
と言ってくる。

「侑斗」
と蒼汰に呼ばれ、侑斗は、なにっ? と足を止めた。

「いきな――」

 いきなり、呼び捨てかっ、と言おうとしたらしい侑斗に、蒼汰は凛子を指差して、
「この女、気が多いぞ」
と言い出した。

 まるで、凛子の身内に文句を言うように。