密室の恋人

「さっきの階で乗ってきた男とか。
 ああ、あんまり口に出して言うと、こっち向かれちゃうけど」
と階数ボタンの辺りを見ている。

 思わず、弥に方に寄っていってしまった。

「その隅にしゃがんでる子供の霊とか」
と弥は右斜め後ろに視線を流す。

 ひいっ、と思い、凛子は弥の腕を掴んだ。

「そうか、この手は使えるね」

 今度は手を振りほどかなかった弥は、凛子を見下ろし、笑って言う。

「えっ?
 嘘なんですか?」

「ほんとだけど。

 今まで誰にも言ったことないんだよ。

 気持ち悪がられたらやだな、と思ってさ。

 でも、こういう役得もあるわけだね」

 そう言ったあとで、ただ……と表情を曇らせる。

「僕にも、君が見てるものは見えないんだけどね。
 君が視線をいつもそっちに向けてるから、なにか居るんだろうな、と思うだけで」

「そうなんですか?」

「面白いね。
 なんでなのかな?

 凛子ちゃんには、一体、なにが見えてるの?」

 少し迷って、凛子は言おうとしたが、ちょうど扉が開いてしまう。