密室の恋人

「大丈夫です。
 誰にもなにも言いませんから。

 ほんとになんにも言いませんから」

 呪文のようにそう繰り返し唱えたが、
「なに言ってんの、僕が園田を好きだったのは、みんな知ってるよ」
と言われる。

「えっ?
 そうなんですか?」

 少し気持ちが軽くなったが、
「ただ、今でも好きだなんて、知らないだけだよ」
と言ってきた。

 余計、罪が重くなった気がする。

「す、すみません」
と少し錆びた冷たい手すりに手をかけたまま、謝った。

「いいよ。
 僕の方がバラしたようなものだから」

 そのまま、弥が少し黙ったので、居たたまれなくなり、口を開く。

「あのー、なんで、千尋さんとはうまくいかなかったんですか。
 ああっ、すみませんっ」

「君はフォローを入れようとすると、ドツボにはまるタイプだね」

「それ、蒼汰さんにも、散々、言われました」
と言うと、

「ああ、蒼汰さんになったんだね。
 さすが、二泊三日もすると違うね」
と弥は笑う。

 いや、貴方もさっきから、凛子ちゃん、って呼んでますよ、と思った。

 弥はいつも、丁寧なのか、女子と距離を置いているのか。

 親しい年下の女子社員でも、必ず、さん付けなのに。