密室の恋人




 片付けるタイミングで、みんなの許から抜け出すと、同じように逃げてきた弥と出くわした。

「上村さん、すみませんでした」
と謝ると、

「いや、もう、園田には参っちゃうよね」

「園田?」

「ああ、貝塚千尋の旧姓だよ」

 あ、そっか。
 結婚すると、名前、変わるもんな。

 入社したときから、貝塚だったので、そんな当たり前のことにすぐに気づかなかった。

「結婚してしばらくしたら、貝塚ですぐに返事できるようになるんですね」
と言うと、は? と言われる。

「だって、元々は人の名前じゃないですか。

 それが自分の名前になって、しっくり来るようになるのって、どのくらいかかるんだろうとか思っちゃって」

「好きな人の苗字だからね。
 別に違和感ないんじゃないの?」

「千尋さんのご主人って、確か……」

「この話、やめない?」
と唐突に、弥が話を遮る。

 違和感を感じるくらいいきなり。

 珍しいな、と思った。

 弥はいつも、話を軌道修正しても、それと感じさせないくらい、ソフトにやるのに。