密室の恋人

 侑斗は笑い、
「まあ、お前もおばさんたちも居ないし、男も居ないから寂しいだろう。

 たまにニャーを貸してやるよ」
と言ってくる。

 凛子の家族は、九州に転勤になった父親についていき、此処にはちょうど就職が決まった凛子だけが残ったのだ。

「なに勝手に私の相手が居ないとか決めつけてんの?」

「じゃあ、居るのかよ」
と侑斗は威圧的に言ってくる。

「居ーーっ」

 一瞬、蒼汰が頭をよぎったが、
「……居ません」
と項垂れて小さく言った。

 此処でちょっと見栄を張りたいがために、蒼汰の存在を持ち出そうものなら、更に面倒臭いことになりそうだったからだ。

 そうだろう、と勝ち誇ったように言う侑斗に、
「言っとくけど、居りゃいいってもんじゃないのよ。

 あんたみたいに、ころころ相手が変わるのも、居るうちに入らないのよ」
と言ってやると、

「来る者拒まず、追わないだけだよ」
と言う。

「なんで、誰も彼も来ておいて、逃げる事態になるのか、知りたいわ……」

 この通り、ろくな男ではないからか。

 顔は文句なく、可愛いのだが。