密室の恋人

「そうよ。
 話しなさいよ。

 あんた、電話にも出ないで」
と言う美晴に、そういえば、彼女からも着信してたっけ、と思い出した。

「いや、単に、食事に行っただけだけど」

 無人島だの船だの、二泊もしただの、語ろうものなら、どんな目に遭わされるかわからないので、黙っていた。

 だが、
「食事っ?
 何処でっ?」
とそれだけで、全員が食いついてくる。

「え、港の近くのレストランで」

 ええーっ、とみんなが声を上げる。

「いいなあっ。
 海の見えるレストランで伊月様とお食事っ」

「いやっ。
 でも、私、緊張してなにも食べられないかもっ」

「私もっ」

「凛なら、バクバクいけるよねっ」

 余計なお世話ですが……。

「で、どうなるの?
 伊月様と付き合うのっ?」

 いや、付き合うどころか、結婚って話になってますけど。

 凛子はロッカーを閉めながら、
「いや、付き合うとかないんじゃな……」
と言ったとき、悪寒を感じた。

 背後にさっきみたいに、いきなり蒼汰が現れそうな気がしたからだ。

 思わず、振り向いてみたが、もちろん、女子ロッカーにはさすがに現れない。

 だが、此処で余計なことを言って、それが蒼汰の耳に入ったら、ボコボコにされるのは確実だ。

 だから、
「どうかなー。
 ないんじゃない?」
と曖昧な言い方をして、逃げ去った。