密室の恋人

「お、おはようございますー」
と通り抜けようとしたが、

「雨宮くん」
と呼ばれてしまう。

 はっ、はいっ、と慌てて振り向いた。

「粗相のないようにね」

 局長は大真面目な顔で言う。

 粗相ってなんだろうな、この場合。

 蒼汰さんを拒否するなとか、殴るなとか、そういう話?

「わかりましたー」
と適当な返事をして、部署のロッカーに駆け込んだが、此処がまた、まずかった。

「凛っ!
 ねえ、どうだった、どうだったどうだった!?」

「あんた、伊月様とデートしたのよねえっ」
と質問攻めに遭う。

「昼休みは逃さないわよ」
と言う千尋に、

「いや、千尋さん、なんで一番ノリノリなんですか」
とロッカーを開けながら言うと、

「だって、結婚して、何年も経つと、もうそういうドキドキとかときめきとか遠いんだもんっ」
と乙女の顔になって訴えてくる。

「せめて人の話で盛り上がりたいのようっ」
とすがりついてきた。