密室の恋人

「ところで、なんで、このフロアに居るんですか?」

「顔が見たかったからに決まってるだろう」

 どうして、この人は、こういうことをさらっと言うかな。

 そんなことを考えていたとき、後ろをちょうど局長が通りかかった。

 思いっきり、こちらを見ている。

「そうですか。
 じゃあ、またあとで」
と慌てて去ろうとすると、手をつかまれた。

 ひいっ。
 局長以外にも誰か来るっ、と慌てて振りほどこうとすると、

「昼休みは忙しくて会えないんだ。
 夜、行ってもいいか」
と訊いてくるので、

「いっ、いいです、いいですっ。
 オッケーですっ!」

 とりあえず、今、その手を離してくれればなんでもいいですっ、と思い、叫んだ。

 よし、と蒼汰は、何故か、頭を撫でてから、手を離し、行ってしまう。

 階段で。

 何故、エレベーターに乗らない、と思いながら見送る。

 振り向くと、まだ、局長は廊下の途中に立ち、こちらを見ていた。

 困ったことに進行方向だ。

 さりげなく行こう。

 さりげなく。