密室の恋人

「でも、私と同じものが見えているのなら、貴方に憑いてるって噂になると思うんですけど。

 そういう感じの話じゃなかったですよ」

「じゃあ、訊いておいてやるよ、その話、上村さんに」

「そうですか?
 私も出会えたら、訊いてみますね」
と言ったが、いや、いい、と言う。

「なんでですか?」

「お前が浮気したら、困るからだ」

「あのー、エレベーターに幽霊が出るんですかって訊いただけで、浮気になるんですか? 蒼汰さん的には」

 そうじゃないが、と腕を組んだ蒼汰は渋い顔をして言った。

「上村さん、いい人だから」

「待ってください。
 いい人をいちいち好きになってたら、身が持ちませんが」

「優しげな男前だし」

「昨夜も言いましたが、上村さんには、癒されませんからね」

 頭が良すぎて怖いというか。

 気を抜いたら、殺られそう、とか思ってしまう。

 あの穏やかな物腰の下で、なにか別のことを考えていそうで。

 だが、考えているのは、悪事ではなく、どうやってからかってやろうかな~という平和的なことのようなのだが。

 気を抜いたら、やられそう、と身構えてしまうことには変わりない。