密室の恋人

 昔、と弥が言ったとき、扉が開いた。

「着いたよ、凛子さん」

「ええっ。
 そこで切るのなしですっ」

「じゃあ、僕、今から、秘書室に上がるんだけど、一緒に来る?」
と開くのボタンを押してくれながら、弥は笑う。

「い、いやです~っ」

 仕方なく、降りながら振り返ると、弥は、
「このエレベーター、幽霊出るらしいよ」
と教えてくれてた。

 でも、『昔』と『このエレベーター、幽霊出るらしいよ』って、話がつながってなくないですか? と思ったのだが、目の前で、扉は閉まってしまう。

「上村さんっ」

 叫んだ瞬間、後ろから、なにかではたかれた。

 丸めた書類を手にした蒼汰が仁王立ちになっていた。

「凛子。
 俺に、おはようもなしに、なんで、上村さんっ、なんだ?」

「えっ? いやっ。
 それどころじゃないですよっ。

 今、上村さんに聞いたんですけど、エレベーターに幽霊が出るって噂があるらしいんですっ!」
と蒼汰に訴えてみたのだが、

「そりゃ、お前に見えるくらいだから、他にも見える奴が居るんじゃないか?」
と軽く流されてしまう。