密室の恋人

 ご両親は忙しいし、猫があまり好きではないから。

 侑斗は、今、両親とは違う部屋を借りて住んでいた。

 コンビニの立地がいいので、ぼろ儲けしているようだから、二部屋借りるくらい、痛くも痒くもないのだろう。

「お前に指定された土産買うのに、みんなで歩いて行ったんだぜ、そのパン屋」

「えっ、そうなの?」

「みんな1日目のゲーセンで金使い果たして、バス代もなかったんだ」

「それは申し訳ない。

 というべきか。

 さすが類は友を呼ぶわね。

 誰も計画性がないのね。

 一文無しで、ひらっと新幹線の切符が飛んだらどうするつもりだったの?」

「歩いて帰る」

「……そう」

 極シンプルに答える侑斗に、なにも言う気がしなくなり、その腕に、預かっていた仔猫を渡した。

「よしよし。
 大丈夫か?

 ちょっとやせたんじゃないか?

 ちゃんと世話してもらったか?」

「ちょっと。

 私、殿様にかしずくように世話してたんだけど?」

 そんなこと言うのなら、もう預からないわよ、と言うと、

「わかった。
 預けないよ」
とあっさり言ったので、つい、土下座しそうになる。

「嘘です。
 すみません。

 預からせてください」