密室の恋人

 



 徒歩で十分、ダッシュで八分。

 あまり変わらないのが悲しいが、ともかく、自宅から会社まで近いのはいい。

 駅から出てきた人々が歩く横断歩道。

 自分も混ざって歩き出す。

 いまいち、まとまらなかった髪を手櫛で整えている間に、会社に着いた。

「おはようございますっ」

 挨拶しながら、日の燦々と降り注ぐロビーに入る。

 受付の友達に手を振ったあとで、ぎくりとした。

 ちょうど、エレベーターのところに、弥が居たからだ。

 笑顔で手を振っている。

 この人は本当に、いつも、いっそ、ナイスなくらいの悪いタイミングで現れる。

「おっ、おはようございますーっ」
と弥や、他の人に挨拶しながら、ちょうど来たエレベーターに乗った。

 意図的にではないだろうが、弥の横になってしまう。

「お、おはようございますっ」

「おはよう」
と弥はなにも突っ込んでは来ずに、素敵な笑顔を見せてくれた。

 よ、よかった、思っていたのだが、みんな、二、三階の人たちだったらしく、さっさと降りていってしまい、すぐに弥と二人きりになった。

 それを待っていたように弥は訊いてくる。

「デート、どうだった?」

 この人、みんなが降りるの待ってたんだな、と気づいた。

 恐らく、一緒に乗り込んだメンツを見て、二、三階で全員消えると読んでいたのだ。