密室の恋人

「電車で帰るんですか?
 駅まで送りますよ」
と言うと、莫迦か、と言われた。

「そしたら、俺がまたお前を此処までーー」
と言いかけて言う。

「やっぱり、戻ろう」

「え?
 なんでですか?」

「だって、よく考えたら、下から上に上がるまでも危ないじゃないか。
 下、コンビニだし」

「いや、逆に、人通りが多いから、大丈夫ですよ」

 結局、蒼汰はタクシーで帰るらしく、店の前で、車を止めた。

「じゃあ、部屋に着いたら、電話しろよ」
と言われ、はいはい、と手を振った。

 コンビニでもう一杯、珈琲を買って上がろうかな、と思ったのだが、なにやら背後霊のように、蒼汰が後ろに立って、上がれ~と念じている気がして、素直に従った。

 珈琲はインスタントにするか、と思いながら、上に上がると、部屋の前に誰か居た。

 侑斗だった。

「あいつ、帰ったのか」
と言う。

「今ね。
 あら、下で見なかったの?」

 店の前で車を止めたのに、と言うと、奥で晩御飯を食べていたと言う。

 侑斗は、反対側の階段から上がってきたようだった。

「ほら」
とビニール袋をくれる。