密室の恋人

「あ、侑斗」
と呼びかけてみたが、何故か、侑斗はこちらを一瞥しただけで、違う棚の方に行ってしまう。

 おや?
と思う凛子の耳許に、蒼汰が、

「ほらな」
と耳打ちする。

「付いてきてよかったろ」
と。

 いや、ちょっと状況が見えないんですが。

 侑斗には、一昨日、駅まで乗せていってもらったお礼をしようと思ってたのに。

「ちょっと携帯見てみろ」
と蒼汰に言われ、鞄から取り出し、開いてみる。

 先程までは圏外で切っていたせいか、表示されていなかったのだが、侑斗から、何度か着信していた。

「侑斗」
と行こうとした首根っこを掴まれる。

「おい、弁当らしきものが入ってきたぞ」

「えっ?
 じゃあ、ちょっと選んでてくださいよ」

 そう振り返った凛子に、蒼汰は、

「よくわからないから、お前について来てもらったんじゃないか。

 まだ、棚に並んでないし」
と言い出す。

「……なにおどおどしながら、目をキラキラさせて言ってるんですか」

 初めてのお使いに出た子供みたいだな、と思っていた。